日本と米国の、金利と為替の関係

日本と米国の、金利と為替の関係

この記事では、ドル円の為替相場が、金利にどのような影響があるか、また金利が為替相場にどのような影響を与えるかを見ていきます。

金利が為替に与える影響

一般的に金利が上昇すれば、その国の通貨が買われる要因になります。

  • 米国金利上昇→ドル高
  • 米国金利下落→ドル安
  • 日本金利上昇→円高
  • 日本金利下落→円安

これは少しでも金利が高い国で資産を運用したほうが得だからです。

日米間の金利差で動く

特に日米間に限っていえば、金利差が為替動向を左右します。

  • 金利差拡大(米国金利上昇)→円安・ドル高要因
  • 金利差縮小(米国金利低下)→円高・ドル安要因

長期的には日米の金利差と為替相場に相関関係があります。とはいえ2020年11月現在のように、米国金利が上昇しているにも関わらず、円高・ドル安が進んでいます。実際の為替相場では、金利の動きだけでなく、政治不安や、政府圧力など、さまざまな要因で動きます[1]

日本は低金利なのになぜ円高に進む?

日本は歴史的な低金利の最中にあり、直感的には円安に進みそうです。実際には円高が、金利の観点で為替を見てみると、日本の方が金利が低いにも関わらず円高が進行しています。これはなぜでしょうか?

これには実質金利というものが影響しています。実質金利は以下の式のように、インフレ率が考慮されています。

実質金利 = 名目金利 ー インフレ率

インフレ率をマイナス理由は、インフレが起こると物価が上昇し、物を買う時により多くのお金が必要になる(=お金の価値は低下する)ので、金利の観点ではマイナス方向に作用するためです。

2020年11月時点で10年もの国債の名目金利とインフレ率はそれぞれ以下のようになっています。

  名目金利 インフレ率 実質金利
日本 0.03% -0.40% 0.43%
米国 0.85% 1.20% -0.35%

上の表では、名目金利は10年もの国債、インフレ率は消費者物価指数(CPI)の前年同月比を使用しています。このように、インフレ率を考慮すれば、実質金利は日本が高く、インフレ率を考慮すれば、資産を円で運用したほうがお得ということになります。今回は10年もので比較しましたが、1年ものや2年ものの短期国債で比較する場合もあります。

金利を見る時は、名目金利だけでなく、実質金利も考慮しよう。

金利だけではない!ほかにも様々な理由で為替が動く

ほかにもコロナウイルスの影響で、米国は大規模な金融緩和を行ってきた関係で、出回るお金の量が増えたことで、ドル安を招いたという見方もあります[2]

また、日本は2020年で364兆円の対外純資産を保有しています。日本は29年間世界一位の純債権国となっています[3]。これが原因で、米国を始めとした海外でコロナの蔓延や戦争など、なにか有事が発生した場合、投資家は資産を日本に引き上げる行動をとりますので、それが結果として円高を招く要因の一つとも考えられます。

そのほか、過去に日本が円安で貿易黒字を拡大した局面で、アメリカからの圧力で円高に誘導した歴史もあります(プラザ合意など)。

為替はのように様々な要因によって動きますので、一つの要因だけで相場を判断するのは危険です。継続な情報収集から為替の動向を見守る必要があります。このあたりはまた話が広がるので、別の記事で整理したいと思います。

為替が金利に与える影響

話が少しそれてしまいましたが、今度は逆の目線で、為替が通貨高や通貨安にどのように影響を与えるかを見てみます。

【例:円高が進行したら日本の金利はどうなる?】
例えば、日本の立場でみて、円高が進行した場合で考えてみます。

円高が進行すると、輸入品が安く日本に入ってきますので、国内で生産される商品に対しても、価格下落の圧力がかかります。国内の物価が下がる要因となりますので、これはデフレ圧力となります。

デフレ局面においては、経済の将来予測を反映する国債利回りは減少する(金利が低下する)要因となります。また、政府は金融緩和により市中の資金流通量を増やす方向に動きますので、日銀が金利の低下を誘導することに繋がります。

まとめ

ここまではあくまで理論的な考えに基づくものです。実際の為替相場は、理論通りに行かないことがほとんどなので、相場の動向を絶えずチェックしながら、その要因を探っていくほかありません。とはいえ、日米でどのようなことが起こっているかをよく観察することで、その動向にヒントが得られるかもしれません。



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[1]・・・ドル円の適正水準はどこ?
[2]・・・なぜ今、円高?基軸通貨ドルへの需要根強いが、FRBの積極緩和がドル安要因に
[3]・・・対外純資産、過去最大を更新 19年末364兆円

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