今回は株式の知識の中でも重要な指標について解説したいと思います。
ネットや書籍ですでに十分すぎるほど解説されている内容ですが、このブログの中で、それぞれの数値を同評価していくべきかを考える上で、改めて整理してみたいと
資本に関する指標は、貸借対照表(B/S、Blance Sheet)の数字と株価の関係から算出されます。
利益に関する指標は、損益計算書(P/L、Profit & Loss)の数字と株価の関係から算出されます。
各指標の意味
資本に関する指標
PBR(Price Book value Ratio):株価純資産倍率
BPS(Book value per Share):1株あたりの純資産
「B」がつくときは「Book」(純資産)の意味なので、資産に関する指標と覚えればわかりやすいと思います。
利益に関する指標
PER(Price Earnings Ratio, P/E, PE):株価収益率
EPS(Earnings Per Share):1株あたりの利益
「E」がつくときは「Earnings」(利益)の意味なので、利益に関する指標と覚えればわかりやすいと思います。
資本と利益に関する指標
ROE(Return On Equity):株主資本利益率
ROA(Return On Assets):総資産利益率
「RO」がつく時は「Return On」(利益率)となるので、利益率に関する指標となりますが、EがEarningsではなくEquityというあたりがちょっと混乱を招く印象です。
日本語で考えると文字と意味が結びつかないので、できるだけ英語で意味を理解するのがおすすめです。
それぞれの指標を詳しく分解する
資本に関する指標
PBR(Price Book value Ratio):株価純資産倍率
株価の指標として最も見られる指標の一つです。解散価値とも言われ、1倍であるときに時価総額(株価✕発行済み株式数)と純資産が同じであることを意味します。1倍以下であれば、純資産に比べて割安であるという見方をすることも出来ます。
PBR = 時価総額 / 純資産
それぞれを一株あたりと考え直すことで以下の式も同じ意味になります。
PBR = 株価 / 1株あたりの純資産(BPS)
一株あたりに直すことで、BPSという指標が使えるようになります。
BPS(Book value per Share):1株あたりの純資産
1株あたりの純資産という言い方以外にも、1株あたりの株主資本という呼ばれ方もします。上の式でも理解できるのですが、BPSは純資産を発行済みみ株式数で割ることで算出することが出来ます。
BPS = 純資産 / 発行済み株式数
繰り返しにはなりますが、BはBookのことで、Bookは純資産となります。「(B)ぼくの純資産」と覚えるといいと思います。
利益に関する指標
PER(Price Earnings Ratio, P/E, PE):株価収益率
PBRと同様に株式指標で最も重要視されている指標です。アメリカではPEなどと表現されています。
PER = 時価総額 / 純利益
1株あたりに直す(発行済み株式数で割る)ことで以下のような式でも表すことができます。
PER = 株価 / 1株当たり利益(EPS)
PERは株価が純利益の何倍かということを表します。言い方を変えると、投資した株式を回収するのにかかる年数という見方もできます。
PERは低ければ割安、高ければ割高ということにはなりますが、単純に数字の倍率だけで割安かどうかを判断するのは危険です。同業種の他の銘柄と比較したり、過去のPER水準と比較して割安かどうかを判断するとよいでしょう。
PER低くなる(割安になる)ケースは以下の2つがあります。
・株価が下がった場合
・純利益が上がった場合
株価が下がった場合はわかりやすいのですが、純利益が増えた場合にもPERは下がります。これは純利益の増加に対して株価の評価が追いついていないと考えることもできます。PERの変化に注目しながら、その変化の要因を分解することが重要です。
またPERとEPSは以下のようにも表せます。(先程の式と意味は同じです。)
株価 = PER × EPS
これは株価が投資家の期待値と企業の実績値の掛け合わせで成り立っていることを表します。
PERのEはEarnings(利益)という意味ですので、「(E)得られた利益」とおぼえておくことで、利益率に関する指標という覚え方ができると思います。
EPS(Earnings Per Share):1株あたりの利益
EPSは他の指標の中でも特に重要視するべき指標といえます。会社四季報では1株益と書いてる部分がこれに該当します。
EPS = 純利益 / 発行済み株式数
EPSは高い方がいいのですが、以下の要因でEPSが上がります。
・純利益が増えた場合
・自社株買いや株式併合で発行済み株式数が減った場合
反対に以下の要因ではEPSが下がります。
・純利益が減った場合
・ストックオプションの発行、株式分割など発行済株式数が増えた場合
EPSが大きく変化したときには、その要因にも着目するべきでしょう。
EPSを見るときに過去の推移を見ることが非常に重要です。EPSを評価する場合には、
1.時間とともにEPSが成長しているか
2.EPSの変化率が安定しているか
の2つの点に注目すると良いでしょう。EPSの成長と安定性については、先人の投資家達も言及しており、ウォーレン・バフェットも重視しています。
他にも「オニールの成長株発掘法」でも直近四半期のEPSが伸びているか、前年同期比で成長しているかをチェックするような指南があります。
資本と利益に関する指標
ROE(Return On Equity):株主資本利益率
ROEは株式資本をどの程度活用できているかを見る指標となります。私からすると、貸借対照表の項目と損益計算書の項目を比較するという点で、不思議な指標に思えます。
ROE = 当期純利益 / 自己資本 ✕ 100
ROEは一株当たりに直すことで、以下のような式に置き換えることもできます。
ROE = 一株当たりの利益(EPS) / 一株当たりの株主資本(BPS) × 100
この式をみれば、EPSが増えることでROEが増えるという見方ができます。また自社株買いなど株式の償却でBPSが増加すれば、ROEが増えることになります。
さらにROEは以下の式に分解することができます。
ROE = (当期純利益 / 売上高) ✕ (売上高 / 総資産) ✕ (総資産 / 自己資本)
言葉を言い換えると以下のようになります。
ROE = 売上高純利益率 ✕ 総資産回転率 ✕ 財務レバレッジ ✕ 100
財務レバレッジに注目する
この式で抑えておきたいのは財務レバレッジです。借入金を増やすことで総資産が増え、ROEが増えることになります。
日本株でいえば、よく自己資本比率が登場しまが、自己資本比率の逆数が財務レバレッジとなります。つまり、借金が少ない(=自己資本比率が高い)と財務レバレッジが下がるいうことになります。
借入が多い=ROEは上がる
借入が少ない=ROEは下がる
バフェット流では、借入金を増やしすぎてROEを高めるのは好まないということです。
(株で富を築くバフェットの法則P93)
総じて株主のためになることが、ROEを向上させることにつながっているので、ROEが高いというのは会社を評価する上で非常に重要になりそうです。ROEを評価する場合には、財務レバレッジが高すぎないか(=借入比率が高すぎないか)に注意しておきましょう。
またバフェットは同書の紹介によるとEPSよりもROEを重視するべきとも主張しているようです。
ROA(Return On Assets):総資産利益率
ROAは総資産に対するどれだけ効率的に利益を生み出しているかを図る指標です。
ROA = 純利益 / 総資産 ✕ 100
先程のROEは自己資本だったのに対して、こちらは総資産ですので、負債なども込みということになります。
総資産 = 純資産 + 負債
この様にROAは負債も含めた効率性を見ることもできます。ただしROEでも財務レバレッジで借入金の内容も見ることができますので、ROEをメインにみつつ、補助的にROAを見るとより財務の理解力が高まるのだと思います。
まとめ
PER,PBR,EPS,ROE,ROA,BPSと似たような3文字の英語について細かく見ていきました。
最後のもう一度整理してみます。
PER(倍):株価収益率、企業の収益性を見る指標
PBR(倍):株価純資産倍率、企業の資産価値と株価を比べた指標
ROE(%):自己資本利益率、企業の自己資本に対する収益性を見る指標
ROA(%):純資産利益率、総資産に対する収益性を見る指標
これらの指標は本質的な意味を理解しないと、ただの数字並べになってしまいそうです。
これらの数字をどれだけ本質的に理解できるかがその企業を理解することの分かれ道になりそうです。