[書籍紹介]お金は歴史で儲けなさい

[書籍紹介]お金は歴史で儲けなさい

普段は「〜なさい」というタイトルの本は読まないんですが、「お金」と「歴史」というキーワードが気になって買ってみました。

良かった点と気になった点を整理しますと、

良かった点
・日本市場を明治時代まで遡って考察されている。
・経済学の観点から今後の日本の未来を予想している。

気になった点
・将来予測が少し強引に感じた。
・2019年の予測が2020年1月時点ですでに外れている箇所もあった。

といった感じでしょうか。でも全体的に知らないことが多く書かれていたので、それは参考になりました。

ただ私は世の中にある様々な予測は外れすためにあるぐらいにしか思っていないので、こういう未来予測系の本は話半分で読むようにしています。

国内株式130年間を俯瞰

単行本の初版が2015年1月で、2019年1月に今回紹介する文庫版が出版されています。

日本の株式市場について、バブル崩壊以後を語るものは多いですが、明治時代までさかのぼって株式市場の考察をしています。

その内容はかなり衝撃的な内容でした。私自身バブル1990年以降のバブル崩壊以降で2020年1月時点でいまだにバブル時のピークをこえておらず、日本株式市場は全く成長していないような印象をもっていました。

しかし明治時代からの130年間を紐解くと、株価は8000倍、平均して7%の収益率に相当するということに驚きました。

特に戦後の高度経済成長の株価の伸びは特に大きかったんですね。

株式に関していえば、1990年代から2009年のリーマンショックまでは全体的に下げ相場でそこからようやく2019年までアベノミクスによる上げ相場であることを見ていると、本当に長期的に取り組まないと行けないなと感じます。

やっぱり強い米国

私は現在ポートフォリオの8割を海外株式で運用する方針で考えていますが、この本でも米国の強さとその理由を紹介していました。米国の強い理由は

・好調な経済と強いファンダメンタルズ
・人口増加

進むシェールオイル開発

ファンダメンタルズの面でいえば、米国は一時期経常赤字と財政赤字の2つの赤字を抱えていました。一時期8000億ドルあった経常赤字も2018年には4700億ドルまで減少しており、それによりドル高となったということです。ちなみに経常収支の言葉を説明すると、

経常収支

経常収支とは、国の国際収支を表す基準のひとつで、経常勘定ともいいます。貿易収支、サービス収支、所得収支、経常移転収支の4つから構成されます。
貿易収支はモノの輸入と輸出の差額、サービス収支は外国とのサービス取引の収支、所得収支は対外直接投資や証券投資の収益、経常移転収支は政府開発援助(ODA)のうち医薬品などの現物援助を表します。(引用:SMBC日興証券

経常赤字とは、この収支がマイナスである状況のことを言います。

財政赤字

国や地方自治体の歳出が歳入を上回っていること。また、その赤字の累積額。不足分は公債(国債・地方債)を発行して補う。
(引用:コトバンク)

シェールオイルの増産はドル高要因

さらに米国では現在シェールオイルの開発が進んでおり、すでに米国内の石油需要の8割は国内でまかなえる状況になっており、その分輸入減らせる余力があるため、ドル高の要因は強いということでした。実際シェールオイルの生産量は2019年現在においても年々増加傾向にあります。

ただしドル高は輸出産業にとってはマイナス要因になりますので、トランプ政権もドル高になりすぎないように注意しているようです。

<追記:2020年1月11日>
2019年10月の日経新聞で、アメリカの赤字は再び拡大し、1兆ドルを超える見通しであるという報道がありました。そうであれば、必ずしもドル高の傾向は継続しないのかもしれません。[3]

日本も円高要素がある?

米国に限らず経常赤字が縮小する(または黒字が拡大する)ことで、自国の通貨が強くなるというのは、為替変動の要因の一つではあると思います。実際日本の経済収支は2018年のデータでは19兆円近い黒字となっています[1][2]。この点で言えば、日本も円高の要素があるということになりますので、相対的に円高ドル安が続くのかというのは少し疑問が残った部分でした。

ちなみに日本の経済収支の内訳のほとんどは「一次所得収支」となっています。これは日本が外国の企業への投資や債権などの配当などによる収益となっており、2018年でも20兆円はこの一次所得収支となっていますので、実は日本は投資大国であることがわかります。

人口増加

人口増加については言うことはないですね。米国は移民もあり人口増加とともにGDPも伸ばしているようですので、この部分は日本よりも圧倒的に魅力に感じる部分でした。

日本は人口が減少傾向にありますので、経常収支も今後マイナスの方向に進むのではないかという著者の予想ではありました。人口減少もありますので、国内の生産力が落ちることで、財やサービスの面では輸入は拡大する方向には動くと思いますが、一次所得収支はそこまで減少する

このあたりの話をもっと詳しく知りたい方は、以下の書籍をおすすめします。
ここで紹介した話以外にも、インフレやデフレの話など、経済学的な勉強の面からも非常に参考になる書籍だと思います。

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[1]・・・2018年の経常黒字、前年比13%減 貿易黒字が縮小(日本経済新聞)
[2]・・・2.経常黒字を支える第一次所得収支と貿易収支(経済産業省)
[3]・・・米財政赤字1兆ドル時代 「双子の赤字」再び強まる(日本経済新聞)

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