著名な投資家であるウォーレン・バフェットのことはもちろん知っていましたが、この本を読むまでどういう投資スタイルであるかを全く知っていないことを知りました。
そしてこの本は、バフェットの投資スタイルを俯瞰的に理解するには最適な本であるように思います。
最も成功した投資家であるバフェット氏の投資スタイルを知らずして投資家を名乗ることはできないでしょうね。
バフェットのスタイルは「フォーカス投資」
バフェットは、少数の銘柄に資金の大部分と投資する「フォーカス投資」をしています。
分散投資こそがリスクを下げるために重要であると私は考えていたのですが、一方で分散投資では儲からないという側面もあるようです。
特に分散投資で投資先を増やすことで、投資対象の銘柄分析を十分に行うことができないため、結果として投資してはいけない銘柄が紛れ込んでしまう可能性が高くなるということでした。
それだけバフェットは、銘柄分析を徹底的に行なっているという裏返しでもあります。
バフェットは投資対象としては、5〜10銘柄がよいと言っています。そして一つの銘柄に最低でも資金の10%を投資する勇気も必要だということです。10%以上投じるということは、投資できる銘柄は最大でも10銘柄ということになりますので、かなり厳選する必要があります。
こういったフォーカス投資のやり方を、証券分析を書いたグレアムとドットの影響を受けた投資家は実践しており、そういった投資家たちはグレアム・ドット村の住人として紹介されており、素晴らしい成績をあげているようです。
フォーカス投資でどうやってリスクを抑えるのか
投資先を集中することで、一見するとリスクが高まりそうですが、十分な銘柄分析を行った上で、「安全なマージン」が確保できるのであれば、リスクはむしろ低いとバフェットは考えています。
「安全なマージン」は後述するベンジャミン・グレアムが生み出した考え方で、簡単に言うと割安で買う方がいいよねという話です。
さらにリスクを抑えるだけではなく、その後の投資リターンを高めるうえでも、こういった投資スタイルが重要ということでした。
保有期間はどの程度がよいか
この点に関しては明確にバフェットも名言していない?ようですが、バークシャー・ハサウェイは5年単位で投資を見ているという話から5年程度のスケールで見ているのではないかということでした。
別の調査によれば、高い投資利回りを得るためには、年間の回転率は0~20%に抑えるべきという報告もあるようです。
影響をうけた3人の投資家
バフェットが影響を受けた3人の投資家も詳しく紹介されています。
ベンジャミン・グレアム
一人目がベンジャミン・グレアムです。ベンジャミン・グレアムは、バリュー株投資の元祖とも言われている人で、「証券分析」や「賢明なる投資家」といった、投資の古典とも言える書籍を執筆した有名な投資家です。
バフェットは、グレアムの元に弟子入りし、グレアムの投資スタイルを踏襲するだけでなく、さらに発展させています。グレアムは、まずまずの企業を安値で買うという、いわゆるシケモク(タバコの吸い殻の最後の一吸い)を狙うというスタイルだったようですが、バフェットは、チャーリー・マンガーと出会うことで、素晴らしい企業をまずまずの価格で買うというスタイルに変えたようです。
グレアムの投資に対する考え方はバフェットでも非常に大きなウェイトを占めています。特に安全なマージンに関する考えは重要です。安全なマージンを生み出すための考え方は以下の2つです。
1.市場全体が低迷している時に買う
2.市場が低調でなくても、株式が本質的価値よりも安い価格で取引されている場合に買う
さらにグレアムはより分かりやすく株式の価値を算出する方法として次の二つのやり方を紹介しています。
1.順資産価値の3分の2で買う
2.PERの低い銘柄に集中する
PERが低いポートフォリオは、全体としてパフォーマンスが高くなるという調査もあったと思います。
フィリップ・フィッシャー
二人目はフィリップ・フィッシャーです。本を読む限りだと、そこまで直接バフェットと関係があったのかわかりません。ただ年齢的にはグレアムと同じ位なので、先輩にはあたるようです。バフェットは以下のようにフィッシャーの影響を受けていると言っています。
「私の15%はフィッシャーで、85%がグレアムだ」
書籍でバフェットの投資方法を見ていると、この割合は非常に納得のいく割合のように思えます。
フィッシャーの投資スタイルで注目なのが、フォーカス投資でしょう。投資先はせいぜい10社で、そのうち3〜4社に資金の75%を投じていたそうでうす。
ちなみにフォーカス投資という言葉こそ使っていませんが、少数の企業に集中投資するスタイルの経済学者として有名な、ジョン・メイナード・ケインズだそうです。
他にも、長期投資を軸としている、損益分岐が低く利益率の高い事業に投資する、投資するためにその会社の事業をよく理解する、などバフェットの投資スタイルと同じやり方が多くあります。
チャーリー・マンガー
3人目がチャーリー・マンガー。マンガーはバークシャー・ハサウェイの副会長もつとめ、バフェットのパートナーとなっている人物です。マンガーの大きな影響が、まずまずの企業を安値で買うよりも、素晴らしい企業をまずまずの価格で買う方がよいという考え方です。バフェットも当初はグレアムのように、まずまずの企業を買っていたようですが、途中からその方針を変更したようです。
フォーカス投資の銘柄をどのようにして選ぶのか?投資の12の原則
この書籍では12の原則が紹介されています。
事業に関する原則
・シンプルで理解できる事業か
・安定した事業実績があるか
・長期的に明るい見通しがあるか経営に関する原則
・経営者は合理的か
・株主に率直に話せる経営者か
・組織の修正に屈しない経営者か財務に関する原則
・1株あたりの利益ではなく自己資本利益率をあげようとしているか
・オーナー利益を考えているか
・利益率の高い企業を探しているか
・1ドルの利益を留保したら企業の市場価値も1ドル以上あがるように心がけているか市場に関する原則
・事業の価値はどれくらいか
・その事業を価値よりもはるかに安い金額で買収することは可能か
特に最初の3つが特に重要であると言っています。
・シンプルで理解できる事業か
・安定した事業実績があるか
・長期的に明るい見通しがあるか
そして、最後にその企業の本質的な価値よりも安い価格で買うことができるかという観点が入ります。これが「安全なマージン」と呼ばれる部分です。
事業の内容については、競争相手と十分に差別化できる事業である必要があるということでした。これは「堀」の深さという言葉で表現されています。
競合と区別がつかないような事業「石油、ガス、化学、銅、木材、麦、オレンジジュース」は価格勝負になりやすく、将来の予測が難しくなるということです。
バフェットの投資の哲学
とにかく企業のことを徹底的に知っているという状態で投資に踏み切るようです。バフェットの投資する企業について、売上高、費用、キャッシュフロー、労使関係、価格の柔軟性、資本配分などあらゆる部分を理解しているといいます。
個別銘柄がよいか、インデックスファンドがよいか
何も知らない投資家はインデックファンドが最適だとバフェットはいいます。もしあなたが、投資に明るく、条件を満たす少数の銘柄を選択できるなら、従来型の分散投資は無意味であると言います。分かりやすく言えば
よくわかっていない人:インデックス投資
よく分かっている人:フォーカス投資
ということになります。自分がどちらに属しているか見極めは必要ですが、投資に多くの時間を割くことができない一般の方であれば、前者ということになるとおもいます。仮に時間がない方でバフェット流の投資を目指すのであれば、本当に少数の企業を徹底的に知り尽くす必要があるのかもしれません。
まとめ
この本を読んでいると、投資の本というよりも、健全な企業とはこうあるべきだという経営指南書を読んでいるような気がします。
投資は株式を買うのではなく、事業を買うというように表現もされていましたが、まさにそれを感じさせる一冊になっていると思います。
ウォーレン・バフェットはバリュー株投資の神様のようなイメージで割安な銘柄に投資スタイルであるということは知っていましたが、そのスタイルをそのまま実践するのはかなり難しいと感じました。
特に難しいと感じたのは、
・何をもってその株価を割安とすべきか
・どこまでその会社に詳しくなれるのか
・少数の銘柄に大部分の資金を投じる
という点でしょうか。この3つだけでも、自信をもって実践するのは、私からすればかなり狂気じみていると感じました。
ただこの本を読んで、本当に自分が投機ではなく、投資をしているという自信がなくなりました。個別銘柄もポートフォリオに組み入れてはいますが、どこまでその銘柄のことを知って、どれだけ安全のマージンをとっているのかという分析は十分にできていないと思いました。
とはいえ本格的に投資をしている方であれば、ウォーレン・バフェットの考え方は必ず知っておくべきだと思いますし、投資における重要な学びが多くあるとおもいます。
バフェットの投資内容や哲学を知る上で、本書は非常に役に立つと思います。