おそらく株式投資の古典的名著として、米国株投資に関する代表的な一冊だと思います。とりわけ長期投資、または高配当投資を考える投資家(まさに私!)であれば、必読の一冊でしょう。
原初初版:2005年3月
日本版初版:2005年11月
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本書は1957年〜2003年までの長期間の株式のパフォーマンスから、どのような投資戦略が最も有効であったかを具体的なデータと共に紹介しています。
この書籍での学びとして大きな点は、一見すると良さそうな投資が実は相対的にパフォーマンスが高くないという事実を示している点です。特に株式の長期投資と配当の再投資の重要性にフォーカスが当てられています。
ジェレミー・シーゲルってどんな人?
ジェレミー・シーゲル(Jeremy James Siegel)は1945年生まれで2020年で75歳になります。ペンシルベニア大学ウォートン・スクールでファイナンスの教授をしています。経済や金融市場にあかるく、CNNやCNBCにたびたび登場し、YahooFinanceでも執筆しています。
この株式投資の未来より前に書いた「株式投資」という書籍がロングセラーとなっています。
それでは実際の書籍の内容について見ていきましょう。
投資家の勘違い
今まではそうであると信じられていた事が、実際に調査をしてみると全く逆の結果となった様々な事実が紹介されています。
本書の中でも成長の罠と呼ばれています。一般的に新興企業や新興業種に関するリターンは高いと考えられていますが、著者が1957年から2003年までのパフォーマンスを調べたところ、以下のような事実が分かったと言います。
- 1957年にS&P500が組成された当時の500銘柄はその後に採用された900銘柄よりも運用成績は高い。
- 長期的に高いパフォーマンスを達成した銘柄は、高配当であった。特にエネルギーセクターは80%近く縮小しているにも関わらず、運用成績は市場平均をうわ上回っている。
パフォーマンスを上げる秘訣は再投資にあり!
どうして縮小しているエネルギーセクターのパフォーマンスが市場平均を上回っているのか?それはエネルギーセクターの銘柄の高い配当を再投資することで、パフォーマンスを向上しているということです。
例えば、ハイテク系銘柄は高い成長が見込めるために期待値も高く、株価が高くまた配当を出さずに内部に留保する傾向があります。そのため、再投資に回す資金が生まれづらく、また再投資をするにしても、高い株価のせいで再投資の効果が生まれづらいということが述べられています。結果としてパフォーマンスを低下させる原因となっているようです。
一方のエネルギーセクターでは、石油系銘柄のように将来の見通しから期待値が低く、株価が低く抑えられています。これによって、再投資によってさらに多くの株を購入でき、さらに低い株価で買うことで、配当利回りが向上し、再投資による効果が大きくなるということです。
さらにもともとの期待が低いために、少し希望的な状況になることで、一気にパフォーマンスが好転するといったようなことが書かれています。
過去最もパフォーマンスが良かったセクターは?
代表的にエネルギーセクターが紹介されていますが、他のセクターはどうでしょうか?過去の経歴を見ると、以下のセクターはパフォーマンスが高いということです。
・エネルギー
・ヘルスケア
・生活必需品
どうしてこれらのセクターのパフォーマンスが良いのか?それは、これらのセクターの銘柄が市場の中で常に期待が低く、株価が抑えられているという点が挙げられます。例えば、[PM]フィリップ・モリスはタバコ銘柄として有名ですが、健康被害などによる訴訟など問題を多く抱え、長期間に渡って株価は低迷していました。一方で配当自体はこの期間しっかりと行われており、耐え忍んで投資を続けてきた投資家は、株価が上昇したタイミングで一気に報われたということです。
その他、コカ・コーラやプロクター・アンド・ギャンブルなどのように、高い品質を維持しながら、しっかりと世界的にブランド化を成功した企業などが、高いパフォーマンスを生み出しているということです。
これからの投資戦略D-V-I指針
投資の考え方を書籍の内容を踏まえて以下のようにまとめています。
Dividend(配当)
個別銘柄の選定では持続可能なキャッシュフローがあり、配当で株主還元できるものを選ぶ
International(国際)
国際的な市場の選択と分散が必要
Valiation(バリエーション)
成長の見通しについて適正な価格の株を買う
まとめ
この本のデータは2003年までのデータに基づいており、2004年〜2020年まで、リーマンショックやコロナショックなど二回の大きな下落がありました。また、原油価格の急激な下落から、エネルギーセクターの株価は、ここ数年下降トレンドを形成しています。
そういった中でエネルギーセクター以外の株価は大きくパフォーマンスを伸ばしました。この書籍の内容が今後も続くのかどうかは、自分たちでしっかりと事実を見定めていかないといけないのかもしれません。