ポートフォリオで国債を含めた方がリスクが下がるというのを以前からよく耳にします。私自身もポートフォリオに国債を加えたいと考えてはいるのですが、よく分かっていないので、今回はどうして国債でリスクが下がるのか?また、購入にあたってどのような国債を買えばよいのかを検討してみたいと思います。
(この文中の「リスク」とは、危険性という意味ではなく、変動幅の大きさを表します。)
先に結論を簡単に言っておくと
- 日本国債は意味無し!
- 米国債はETFが有効!
- ポートフォリオに加えるならば、株価が好調な時に!
といった感じになります。
国債とは?
国債について再確認しておきます。wikipediaに聞いてみましょう。
国債は、国家が証券発行という方式で行う借入金のことである。
発行時に償還期限と利率が定められており、基本的には、購入者はこれに応じた利息を受け取ることができる。償還期限を迎えると、元金である国債の発行時の金額(額面額、または額面価格という)が支払われる。
国債 – Wikipedia
要は国の借金ということですね。
国債をポートフォリオに加える話で有名なのはバフェット
ポートフォリオに国債を含めるべきという話では、ウォーレン・バフェットが有名です。バフェットは妻への相続の遺言で以下のようなメッセージを残しています。
現金の10%を政府短期債で、残り90%はS&P500のインデックスファンドで運用するよう指示しました(超低コスト投信で知られるバンガード社の投信を勧めます)。
2013年「バフェットからの手紙」
政府短期債というのは、このあとさらに説明しますが、米国の短期国債(通称T Bill)のことになります。
短期国債をポートフォリオに加える理由
なぜバフェットはこの短期国債を含めるように推奨しているのか?これって色々と書籍やネットで調べていても、明確にスッキリする答えってなかなか得られなかったのですが、以下のような理由が考えられます。
- 資金の100%を株式投資に回すと資産全体の変動が大きくなるが、一部を価格変動が少ない国債としておくことで、資産全体のリスクを減らすことができる。
- 株式の下落時に債券価格が上昇することで、株価下落のリスクをへらすことができる。
- 現金で持っておくよりも金利が高い。
このあたりの3つの理由なのではないかなと考えられます。
2については、株価と債権が逆の動きをする(逆相関関係)ことで、株価の変動リスクを抑えることができるとされています。[5]
3については、米国の短期国債の利回りを見てみると、コロナショックで大幅に下落(一時マイナス)になりましたが、0.1%程度の金利があります。
バフェットが上記のように言っているからといって、日本の個人投資家が直接米国短期国債を買うには、利回りが低い上に為替リスクが大きく、本来意図したリスクを抑える効果が少なくなる可能性があります。購入するならば、後述する米国のETFを購入する方がよいと思います。
ちなみに、日本の証券会社から米国の短期国債を直接売買するのは難しく、例えば楽天証券では新規発行の債権は買えません。(タイミングによっては買えるかも?既発債だと長期国債は購入可能)
なお、モダンポートフォリオ理論では、資産の種類を分散することが重要であると言われており、株式、国債、金など、相関関係が逆相関、または関係がない資産を持つことことでリスクを低減できると言われています。[3][4]
日本国債:日本の投資家がポートフォリオに日本国債を加えるには?
新規国債を購入する
まず一番最初に考えられるのが日本の新規国債を購入するという方法です。これは楽天証券などで購入することができます。ちなみに個人が買える国債は2つに切り分けられます
- 個人向け国債
- 国債(個人向け国債でないもの)
個人向け国債は、個人の投資家しか買うことができない国債で以下の3種類あります。[1][2]
- 固定3年
- 固定5年
- 変動10年
いずれも共通して以下のような様々なメリットがあります。
- 利回りが最低0.05%と補償されている
- 元本の価格変動はない
- 購入時の手数料はない
- 購入から1年後に中途換金できる
- 中途換金する場合の国債は政府の買取
これらの特徴により、国債に存在する3つのリスク(価格変動リスク、信用リスク、流動性リスク)のうち、価格変動と流動性のリスクは存在しないことになります。(日本国が破綻するという信用リスクは完全にゼロではありません。)
日本の大手銀行の預金金利は0.001%となっていますので、国債を購入することで、50倍の金利で運用することができるのがメリットと言えます。
ただ逆を言えば、景気悪化時の金利低下局面で、債券価格が上昇することはないので、株価下落と逆相関するといったリスクヘッジを狙うことができなくなります。
あくまでも、元本と最低利回りが保証された、安全資産として考えるべきでしょう。
ちなみに大手銀行などでは0.001%ですが、私も愛用している楽天銀行は、楽天証券と連携させることで0.1%となります。金利のためだけであるならば、楽天銀行だけで十分なのではないかなと思います。
債権市場の通常の国債を個人で売買するのは難しい?
個人向け国債以外の債券市場でも国債は取引されています。個人も参加する権利自体はあるのですが、少なくともネット系の証券会社から市場に参加するのは難しそうです。(証券会社が儲からないからだとか)
なお、通常の国債ですが、価格は市場によって変動するのに加え、金利も変動します。金利自体も個人向け国債と違ってマイナス金利となっていますので、個人レベルではほとんど参加する必要はなさそうです。
また、東証に上場している債権関連のETFも15銘柄ほどあります(外国債券ETFも含む)。ただいずれも出来高も比較的少なく、ポートフォリオに加えるのにはかなり微妙です。
米国国債:ETFの種類が豊富
米国国債
米国国債、財務省債権とか政府短期債などのような呼ばれ方をしています。償還の期間に応じて以下の3つに分けられています。
- 短期国債(Treasury Bills : 2, 3日-52週間の割引債)
- 中期国債(Treasury Notes : 2, 3, 5, 7, 10年物の利付債)
- 長期国債(Treasury Bonds : 30年物の利付債)
新規国債と既発債があるのですが、楽天証券で既発債が数種類購入できる位で、あえて大規模に購入するほどではないかなと思います。特に先程チャートも載せましたが、金利がほぼ0に近くなっており、以前に比べると米国債の金利の魅力は低くなっていると思います。
米国国債のリスクは、以下のようなものがあります。
- 価格変動リスク
- 信用リスク
- 流動性リスク
- 為替リスク
債券価格自体は金利によって変動しますが、日本国債と同様に、債券市場で個人が直接取り引きする方法は少なくともネット証券ではなさそうです。
楽天証券で既発債を購入できますが、こちらは額面と利回りが確定しているものになります。
米国国債の場合は、為替リスクが最も大きい要因となります。1ドル100円から99円と円高に進んだ場合、1%の為替差損が発生することになります。2020年の米国国債の中長期国債は0.2〜0.3%程度の利回りですので、ちょっとした為替変動ですぐにマイナスとなってしまいます。
リスクを抑えたいはずの米国国債で、リスクが上がるのは目的と異なるので、直接米国債を購入するのは、ポートフォリオに加えるという観点ではよくないのではないかと思います。
米国ETFは種類が豊富
米国国債をETFとして非常に多くの種類が流通しています。
ETFであれば、株価下落局面で、株価と逆の動きをする銘柄を選択することで、リスクヘッジになりそうです。
この中でもブラックロックの運営する[TLT]iシェアーズ 米国国債 20年超 ETF は特に最大クラスのETFのようです。短期国債ETFでは[VGSH]バンガード・米国短期国債ETF などもよく目にします。日本だと[AGG][BND]なども有名ですね。一つ一つのETFを紹介していると途方もないので、債権関連ETFは別途記事にまとめたいと思います。
米国債ETFをポートフォリオに含めることで資産全体のリスクを低減できると推測できます。
日本でもETFとして米国債の購入は可能ですが、出来高が少なく、ポートフォリオに加えるのは微妙に感じます。
比較的出来高の多いETF
1482 | IS米国債7-10ヘッジ |
1656 | IS米国債7-10ETF |
新興国国債:リスクは高いが利回りも高い
新興国債権はリスクを抑えつつも、リターンが見込めるということです。[3]
記事も大分長くなったので、このあたりはまた別の機会にまとめたいと思います。
まとめ
現状日本国債をポートフォリオに加える理由は全くないと思います。現金で保有して、楽天銀行で0.1%の金利で普通預金していたほうがマシですね。
米国債のETFは、株価と逆相関の動きをする銘柄をポートフォリオに加えることでリスク低減に役立つと思われますが、購入のタイミングも重要かと思います。基本的に株価の回復局面、または好況局面で国債をポートフォリオに加えるべきかと思います。
コロナショックのあとの様に、株価が下落して、国債価格が上昇している局面では、折角株価が安く買えるメリットを自ら無くしてしまうことになりかねません。
今後株価が回復してきた局面でウェイトを増やし、株価の暴落時(国債価格の上昇時)に国債を売却して、株式の購入にあてるという戦略が有効なのではないかと思います。
もし私の考えが間違っている場合や、他の考え方がある場合は、是非コメントいただければうれしいです。
【参考】
[1]・・・個人向け国債(財務省)[2]・・・最も安全な資産運用とされる個人向け国債は何が魅力なのか、特に10年変動タイプが好まれる理由
[3]・・・国債は安全資産ではなく、ただのリスク資産になってしまった[4]・・・ウォール街の最新理論を活用!分散投資「最強のポートフォリオ」(大井 幸子) | マネー現代 | 講談社(1/3) – 現代ビジネス
[5]・・・株式と債券の効果的な分散投資 – 日興アセットマネジメント
【書籍】
ウォール街のランダム・ウォーク―株式投資の不滅の真理