高配当投資家の尊師としておなじみのジェレミー・シーゲル。日本では「株式投資」「株式投資の未来」など人気が高いですよね。
これらの本で共通して主張されているのが、割安株の高配当株投資(&配当再投資)が、長期的には成長株の利回りを上回るというものです。
今回はこの投資法がうまくいかないのではないかと思い記事にしてみました。冒頭から言うのもなんですが、自分であまりしっくり来ていない記事なので、流し読みして頂く位で丁度いいかもしれません。
失敗すると思い始めたきっかけ
なぜうまくいかないのかと思ったかというと、
1.SPYDで含み損が大きくなった
2.SPYDの配当が大きく減配(2020年9月)
3.S&P500やハイテク株とのパフォーマンスの差がありすぎる
といった現象を目の当たりにしたからです。
シーゲル流投資とは?
ジェレミー・シーゲルによれば、割安株の高配当銘柄に投資した方が、長期的にハイテク株などのグロース株に投資するよりも投資利回りが高いと主張しています。シーゲル流投資という投資法は特に定義されていませんが、今回は割安株の高配当投資(&配当再投資)をシーゲル流投資ということにしています。シーゲル本では、以下のような投資が紹介されています。
・ダウ10種(ダウの犬)
・S&P10種
これらの投資利回りを過去50年で比較したところ、それぞれダウ30種、S&P500よりも利回りが高かったというものです。しかもベータは1以下(つまり市場平均よりもリスクが低い)ということで、非常に有効な戦略として紹介されています。
高配当順という意味では割安の評価は含まれていませんが、配当が高い≒株価が低い≒割安株という解釈のように見受けられます。低PER戦略も有効であると主張していますので、割安株≒低PER銘柄とも置き換えられるかもしれません。
しかし、ここ10年の米国株の値動きを見ていると、果たしてそれがどれだけ正しいのかは疑問です。10種戦略と銘柄構成は違いますが、S&P500の高配当上位80銘柄で構成されるSPYDをシゲール流投資と見立てて、失敗する理由の仮説を考えてみました。
どうして失敗するのか?
1.日本で投資すると税金の問題で効率が悪すぎる
まずこれが一番大きいのですが、日本から米国株の高配当を購入する場合、配当金には米国で10%、日本では米国税が差し引かれた額に20.315%の税金が二重で引かれることになります。米国税は確定申告すれば外国税額控除として、所得税から還付されますが、20%の税金が配当のたびに引かれるということは、シーゲルもさすがに想定はしていないでしょう。
日本で米国株に投資する場合には、税金の二重課税の問題もありますので、心情的にはキャピタルゲインを中心としたポートフォリオの方が有利なのではないかと思います。(配当が内部留保され、税金の繰延効果が働くという意味で)
2.株価の下落が大きすぎる?
シーゲルによれば、高配当銘柄は、高配当が故に暴落時にディフェンシブ性を発揮するとしています。しかし、コロナ暴落ではS&P500以上に下落しました。S&P500の値動きと比べてどれだけ株価のブレがある指標としてベータというものがあります。S&P500の値動きがベータが1となるのですが、SPYDに関してはチャートを見る限りでもベータは1以上ありそうです。つまりディフェンシブ性はないと考えられます。
高配当銘柄としても有名な[XOM]エクソン・モービルなどは、コロナ前と比較して株価は55%下落しています(執筆時点)。配当利回りも、10%弱まで上昇していますが、株価の下落の大きさの前に焼け石に水の状態です。
仮に長期投資による配当再投資の複利効果でパフォーマンスが大きく上がるのだとしても、どれだけの寒い冬を投資家は乗り越えなくてはいけないのでしょうか。
3.ハイテク株が伸びすぎている
もう一つ、ハイテク株の株価の伸びが著しく、この影響でS&P500のパフォーマンスに大きく水をあけられています。2000年頃のITバブルの頃も、かなり差が開いたとシーゲルは言っています。とはいえ、GAFAMを筆頭にこれだけS&P500が伸びているのを目の当たりにすると、SPYDのパフォーマンスはあまりにも低く感じます。
もしこのシーゲル流投資が正しいというシチュエーションが来るとしたら、ハイテク株が80%近く暴落し、SPYDがディフェンシブ性を発揮して下落率が小さい場合などでしょうが、そのようなことは起こるのか甚だ疑問です。多くの投資家がそうしているように、ハイテク株が伸びているのであれば、それに乗って稼ぐ方が手っ取り早く感じます。(含み益が大きい方が精神的に楽)
高配当投資で人気の高いSPYD
シーゲルの話からSPYDに投資している人も多いと思うのですが、このSPYDが結構曲者だと私は考えています。
SPYDの特徴
・S&P500から高配当上位80銘柄を
・均等に投資する
・リバランスは1月と7月の年2回
S&P500などは時価総額加重平均となっており、時価総額が大きい(つまり会社として評価されていて、下落に耐性がある)銘柄の下落率が小さく、全体として下落の耐性があるのではないかと思います。一方で均等分散の場合は、優秀な銘柄もそうでない銘柄も等しく株価に反映されますので、より下落率が大きくなると考えられると思います。
それに加えて配当の二重課税問題もありますので、SPYDへの投資は慎重になった方がよいのではないかとというのが、今の結論です。
シーゲル投資は忍耐がカギか
私自身SPYDは保有していますが、追加の購入はできていません。配当の再投資も含めてS&P500を上回るイメージが全く沸きません。
SPYDに限らず、高配当投資でお金持ちになったという人は、あまり目にしない気がします。
もしSPYDのような高配当投資がうまくいくとしても、相当な忍耐が必要なことは間違いありません。市場が評価していない株を、持ち続けるのだけでなく、継続的に購入していくという、簡単そうで、実はもっとも難しい投資法がこのシーゲル流投資なのかもしれません。
USスチールといったように、株価が下がり続けてそのまま上場廃止になった銘柄もあります。下がり続けても、いつか報われて、株価が上昇すればいいのですが、その見込みも分からない状態で買い続けるのは、それこそギャンブルに等しいと思います。
過去50年で高配当投資の利回りが高かったというシーゲルの話も、生存者バイアスがかかっているのかもしれません。
シーゲル本に書かれている高配当投資戦略は過去50年間といった長期で検証しているので、もしかしたら50年位続けたらうまくいくのかもしれませんが、それだけ続けないと分からない戦略は、私は取りたくありません。
最後に
高配当投資のすべてが悪いとは考えておりませんが、米国株での高配当戦略は、課税の観点から日本では大きなディスアドバンテージがあると思います。
銘柄選択やポートフォリオの考え方次第ではありだと思いますが、シーゲルの本のみを根拠に、高配当戦略に依存しすぎるのはリスクが高い戦略なのかなと思います。
この記事ではまた考えがまとまっていない部分もあり、論理的に色々と矛盾があるかもしれませんが、今の考えを整理する意味で、一旦公開したいと思います。書き終えて読み返してみると、少し感情的な要素も入っている気もします。なにか間違っていることがあれば、コメントいただけると幸いです。