今回の記事では米国で有名な通信株4社([T]AT&T、[VZ]ベライゾン・コミュニケーションズ、[TMUS]TモバイルUS、[S]スプリント – 2020年4月1日上場廃止)について比較してみたいと思います。
3社はそれぞれどんな会社
[T]AT&T
世界最大の通信会社で、創業は電話を発明したことで有名なグラハム・ベルが1877年に創業した会社が前進です。
2018年にタイム・ワーナー(現ワーナー・メディア)を買収しました。ワーナー・メディアの傘下には、映画会社のワーナー・ブラザーズや、ニュース専門チャンネルのCNNを擁しています。
AT&Tの銘柄分析は大手投資メディアが複数分析していますので、投資を検討している方で深い分析が欲しい方はこちらを参照した方がよいでしょう。(←投げやりww)
これらの記事を見てみると、借入金の負担が大きく、また収益源だった衛生放送サービスもネットフリックスやアマゾンに奪われて、激しい競争環境にさらされており、非常に厳しい環境に立たされているようです。
買収したタイム・ワーナーも、投資家からはコスト増とみなされてマイナス要因となっていたようですが、2019年は借入金の目処がたったということで、株価も回復基調になったようです。
2015年にダウ平均から除外されています。
財務状況とテクニカル分析
過去5年間の財務情報です。配当性向が70%から100%など、高い配当性向となっています。
AT&Tは連続増配が2019年で35年となっています。これだけ連続増配を維持する中で、純利益の成長以上の増配率が続いているため、今後の増配率は減少すると予想されます。
売上高 | 純利益 | 1株益 | 1株配 | |
---|---|---|---|---|
2015 | 146801 | 13345 | 2.37 | 1.89 |
2016 | 163786 | 12976 | 2.10 | 1.93 |
2017 | 160546 | 29450 | 4.77 | 1.97 |
2018 | 170756 | 19370 | 2.85 | 2.01 |
2019 | 181193 | 13903 | 1.89 | 2.05 |
2020 | 171760 | -5176 | -0.75 | 2.08 |
売上高、純利益:[百万ドル]、一株益、一株配:[ドル]
10年以上のタイムスパンで比較してみると、長期的には上昇トレンドを形成しています。
2019年の配当性向が100%を超えており、5年スパンでみれば、株価はやや下降局面に入っているようには見えます。
[VZ]ベライゾン・コミュニケーションズ
AT&Tと並ぶ、世界最大級の通信サービス会社です。全身のベルアトランティック社は1983年に創業しています。
ベライゾンはS&P500のほか、ダウ30種平均やラッセル1000などの指標に採用されています。AT&Tは以前はダウに入っていたのですが、今はベライゾンにその地位をとって変わられたということですね。
2015年にネット大手のAOLを買収しています。2018年には世界初の商用5Gのサービスを提供しており、2020年5Gの投資を充実させているようです。
2004年4月8日からダウ工業30種平均に採用されています。この部分に関しては、AT&Tよりも評価されているようです。
財務状況とテクニカル分析
売上高 | 純利益 | 1株益 | 1株配 | 配当性向 | |
---|---|---|---|---|---|
2015 | 131,620 | 17,879 | 4.37 | 2.23 | 51.0% |
2016 | 125,980 | 13,127 | 3.22 | 2.285 | 71.0% |
2017 | 126034 | 30101 | 7.37 | 2.335 | 31.7% |
2018 | 130,863 | 15,528 | 3.76 | 2.385 | 63.4% |
2019 | 131,868 | 19,265 | 4.66 | 2.435 | 52.3% |
売上高、純利益:[百万ドル]、一株益、一株配:[ドル]
売上高こそAT&Tの方が大きいのですが、2019年の純利益で比較すると、実はベライゾンの方が大きいのが意外です。
配当性向も2019年が50%程度と財務的にAT&Tに比べて余力があるように見えます。
配当利回りは4%台と、AT&Tに比べるとかなり低い水準ですが、配当性向も50%弱となっており、財務的にベライゾンの方が余裕がありそうです。
特に5Gには多額の投資が必要であるとも言われており、ベライゾンのこうした配当余力はメリットがあるように見えます。
長期トレンド、過去5年トレンドを見ても、すべて上昇トレンドに乗っています。
[TMUS]TモバイルUS
2013年設立のアメリカで電話加入者数第3位の携帯電話事業者です。2020年にスプリントを吸収合併し、会社名もT-Mobileに変わります。
この記事からみて、携帯電話会社は3者の寡占状態となっているので、収益性に大きな変化が起こることはないのかなと思います。
日本の携帯電話事業者との市況環境比較
日本の携帯電話会社でもここ5年ほど、NTTドコモ、ソフトバンク、KDDIのシェアはほとんど変化していません。[1]
携帯電話契約自体、シェアがそれほど変化しない特徴があると考えても良さそうです。
日本においてはソフトバンクが2013年に大幅に売上が急増しているのですが、これはスプリント買収による影響です。
通信事業者が売上を伸ばすには、大規模な買収しかないという裏返しなのかもしれません。
ソフトバンクはT-mobile株を売却か?
2020年5月19日、25%保有するTモバイルUS株を売却するという報道がありました。
[S]スプリント
2013年にソフトバンクが216億ドルで買収、その後2020年にT-Mobile USによる吸収合併されました。
すでに上場廃止となりました。
各社の財務状況比較
百万ドル | AT&T | ベライゾン | Tモバイル | スプリント |
---|---|---|---|---|
売上高 | 181,193 | 131,868 | 44,998 | 33,600 |
純利益 | 13,903 | 19,265 | 3,468 | -1,943 |
1株益 | 1.89 | 4.66 | 5.02 | -0.48 |
1株配 | 2.05 | 2.435 | – | – |
配当性向 | 108.5% | 52.3% | – | – |
売上高、純利益:[百万ドル]、一株益、一株配:[ドル]
続いて約5年間の比較チャートです。
メインチャート:S&P500、オレンジがTモバイル、赤がベライゾン、青がAT&Tとなっています。
Tモバイルだけがオーバーパフォームしており、ベライゾン、AT&Tの順でパフォーマンスが悪くなっています。
まとめ
スプリントがTモバイルに吸収されましたので、実質アメリカの携帯事業者は3社になっています。
5Gのサービスが鍵?
現状3社の中では、ベライゾンが5Gの投資では先行しているようです。スプリントは5Gの開発で遅れをとっていたようですが、Tモバイルと合併した中で、どのように展開していくかが、今後の鍵になりそうです。
配当はAT&Tが高いが、財務負担が大きいか?
配当利回りを比較してみると以下のようになっています。
AT&T:7.18%
ベライゾン:4.52%
Tモバイル:無配
2020年5月20日時点
株価の成長余力でみれば、TモバイルS&P500をオーバーパフォームしており魅力的です。
AT&Tは配当こそ魅力的ですが、財務上の負担も大きく、配当を出しすぎており、株価の成長が見込めないと考えております。ベライゾンは、程よく高い配当を出しつつも、株価も成長しており、投資対象となりそうです。
配当を無視するならば、Tモバイルの株価の成長は魅力的ですので、キャピタルゲインを目的にするならば魅力的です。
高配当ETFに含まれる
AT&Tもベライゾンも、高配当ETFとして有名なSPYD、HDV、VYMに含まれています。いずれも配当利回りは高いので、個別に通信株を買わずとも、ETFを買っていくのも一つの手です。
[1]・・・総務省が大手携帯キャリアのシェアを発表 1位はドコモで38.1%(2019年12月23日)