[書評]ケン・フィッシャーのPSR分析入門

[書評]ケン・フィッシャーのPSR分析入門

PSRについて詳しく書かれた本としてはこの本が一番有名な気がします。

日本では書籍で2009年1月の発売ですが、原著初版は1984年と、まあまあ古い本です。書籍の中で登場するグラフも確かに古い!
(この手の本は、情報が古くなるのも早いので、いつ発売された本なのかも重要です。)

PSRの割安、割高の話も、今の時代に当てはめるとかなり無理があるように思います。そのあたりも含みおきながら読んでみるといいかもしれません。
(GAFAMや最近のSaaS企業の分析したい!みたいなテンションで読むと、期待はずれ感があります。)

PSRを使ってスーパー企業を探す

書籍自体多くのことは語っていなくて、PSRの評価方法と、PSR以外にもどういう評価が必要なのかという点が色々と紹介されています。

本の主旨としてはPSR(株価売上高倍率)を活用して、グリッチ(一時的に不調)なスーパー銘柄を探し出そうという内容です。(スーパー銘柄というのは、数年で3~10倍になるような銘柄のこと。)

従来のPERやPBRといった株式指標では、売上が伸びていて、利益が赤字だと、正しい評価ができませんでした。しかしハイテク株などは、先行投資などにより一時的に赤字になることがあり、その期間を克服できれば、大きく成長できる余地があるということです。

PSRの値については、以下のような具体的な数値で紹介されています。

PSRが1.5倍を超えるものは避ける
PSRが3倍を超えるものは買ってはいけない
PSRが0.75倍以下のスーパー企業を探す

PSR以外にも着目したい点

筆者はPSRはそれさえ見ていればOKというような万能な数字ではなく、さまざまな観点から企業を評価すべきと言っています。私が気に入ったフレーズとして以下のようなものがありました。

クジラを陸揚げする場合、たった一本の紐で揚げようとするのは愚かなことである。クジラにはできるだけ多く銛を刺し、あらゆる場所からしっかりと固定する。同様に、スーパー株式を陸揚げしたいと思うなら、バリュエーションの観点から複数の異なる紐をくくりつけたほうがよい。そうすることで(非常に高値となった)スーパー企業ではなく、スーパー「株式」を釣り上げるのに役立つ。

書籍の中ではPRR(株価研究比率倍率)も使おうという主旨で紹介されていましたが、PSR以外にもさまざまな観点で企業を評価するのは当然ながら重要でしょう。とはいえ、例えばPSRといった指標を新しく知った時など、それだけで銘柄を評価してしまう可能性もあるので、そういう時の戒めとしめも、重要な言葉だと思います。

不公平なほどの優位性

PSRという指標以外にも、ビジネス面での着目点でも紹介されています。とくに優位性があるかどうかは繰り返し主張しています。

例えば、優位性としては以下のようなものが紹介されています。

●流通の優位性、異なる市場へ製品、費用、技術基盤を広げる能力
●関連の強い製品の広告によるスケールメリット
●取引上の秘密
●大きな時間的リード
●低コスト生産の技術
●顧客が高価格を支払う高品質のイメージ

ビジネスの優位性は、ウォーレン・バフェット流でいえば、「堀」があるかどうか、という言い方をしています。この堀が参入障壁をつくり、高い利益率を実現するということになるのでしょう。

マーケティングに強い会社を選ぶ

技術に強い会社とマーケティングに強い会社があれば、マーケティングに強い会社を選んだほうがよいというようなことを言っていました。

これも非常に腑に落ちる部分です。日本も高度経済成長時代にモノづくりで世界を席巻しましたが、その後の停滞はまさにこのマーケティングの力不足であると感じています。そういう点で、アメリカの大手IT企業などはマーケティング戦略が非常に優れているようにも感じます。

新しいスーパー企業を探す時でも、マーケティングの側面は重視した方がよいということが繰り返し書かれていました。

感想

書籍版で400P超えとかなり分量のある書籍ではありますが、言っていることは少ないです。PSRをより詳しく知りたい方向けというよりは、PSRが生まれた時どのような使い方が想定されていたのか?という観点で見ると、一読の価値があると思います。

PSRの使い方だけであれば、ネットの記事とかでも十分かもしれません^^;



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