今回は江戸中期の米相場の相場師である本間宗久の投資法について書かれた書籍の紹介です。
酒田五法とも呼ばれいまでは当たり前に使われているローソク足を最初に考案したものもこの人であると言われています。
そして読んでみると、「えっ、これTwitterで良く見かける光景じゃん」というものばかり、、、
イナゴ投資で高値づかみばかりする、、、
Twitterの有名な人が買え(売れ)って言って失敗した、、、
年中投資し続けて、うまく資産が増えない、、、
こういう人には是非読んで欲しい書籍です!
本間宗久は今でも十分に通用する様々な相場哲学は非常に参考になるので、重要なポイントを紹介したいと思います。
相場の基本三原則
米商(内)は附出し大切なり。附出し悪しき時は決して手違ひになるなり。又、商内進み急ぐべからず。急ぐ時は附出し悪しきと同じ。売買共、今日より外商ひ場なしと進み立つ時、三日待つべし。是、傳なり。篤と米の通ひを考へ、天井底の位を考へ売買すべし。是、三位の傳なり。底直段(値段)出ざる内は幾月も見合せ、図に当る時を考へ売買すべし
この中で「三位の傳」が紹介されています。「傳(でん)」というのは秘伝中の秘伝という意味で、秘伝中の秘伝の三原則といったところでしょうか。
この3つの原則を紹介したいと思います。
1.投資は最初が肝心
事前にしっかりと相場を研究し、方針をしっかりと研究して売買することの重要性を伝えています。事前に方針を決めずに売買を行うと、必ず失敗すると説明しています。
これと同じようなことをウォーレン・バフェットも「なぜこの会社を買収するのかという題で1本の小論文を書けないなら、100株を買うこともやめた方がいい」というようなことを言ったそうです。
現代の取引に当てはめるなら、以下のような点を事前にじっくりと研究する必要があるということでしょう。
・市場の動き
・買う理由
・どういう状況で売るか
こういった点を事前にしっかりと把握することが重要になりそうです。
2.三日待つ姿勢
早急な売買は失敗の元になるため、しっかりと時間をあけて冷静な頭で判断するように勧めています。
また、短命な材料で飛びつき怪我しないためにも、この間をあけるということが重要です。
行動経済学的に、時に人は非合理的な行動をとることが知られていますが、この原則にも、人間の不確かな行動を諌めるような文言が入っている点が非常に興味深いです。
3.天井と底を見極める
相場の基本は、安く買って高く売る、ことですが、相場を観察し、どこが底(天井)になるかをしっかりと予測するように言っています。
三原則の中でも、これが一番むずかしい印象です。最近では、株価の上下はランダムであるというランダム・ウォーク理論もあるように、株価の上下の予測はかなり難しいという意見が多いように思います。単純に解釈すれば、天井と底を見極めるのは、現代では難しいといえるかもしれません。
表面的に解釈すれば、底値で逆張りで買ったほうが儲かるというようにも見て取れますが、本質的な部分では、相場の動向を注意深く観察し、株価がどの様に動くのかをしっかりと見定めて投資するという、情報収集と仮説設定をしっかりするように説いているのかもしれません。
また「心に叶わざる相場の時は休むべし」とあるように、天井と底を見極めるために、しっかりと待つことの重要性も言っています。年中相場に張り付いているのではなく、チャンスをじっくりと待つことの重要性も説明されています。
これはこの後に紹介する相場禅として「機を待つに仁」という部分でもその重要性を言っています。
3つの相場禅
相場に向き合うための3つの心構えが紹介されています。
・機を待つに仁
・機に乗ずるに勇
・気を転ずるに知
なんかもう、私とかはこの言葉を見るだけで「かっこいいな」と少年心がくすぐられます。
機を待つに仁
機は機会、仁は忍ぶという意味で、機会を待って忍ぶことが重要であるという意味です。
本間宗久は、繰り返し、待つことの重要性を言っています。
休むも相場
売り買いは3日まて
などの考え方がこれに当たります。
機に乗ずるに勇
これはタイミングに合わせて時にはリスクをとって行動する勇ましさが必要ということです。
本間宗久はあくまで理詰めで物事を考える思想だったようで、ただギャンブル的に勝負するのではなく、徹底的に研究することで、リスクを最小限に押さえて、リターンを最大化するための重要性を説いています。
気を転ずるに知
気は気持ちや投資家心理を表しており、投資にあたっては大衆と同じ行動をとってはだめで、大勢とは逆のことをすることが勝ちにつながるというようなこと言っています。
本間宗久はどちらかといえば、逆張り思想(反対思考法)を実践していたようです。
個人的に逆張り投資は、相場を読むことは難しいという観点から、非常に難しくリスクのある投資家だと思います。とはいえ、本間宗久の時代の、しかも米相場においては値動きを比較的読みやすかったのかもしれません。
現代風に解釈し直すなら、大勢が買いに向かっているときに、他人を真似して買いに向かうと負ける原因になるという考え方もできると思います。
本間宗久は以下のような指摘もしています。
腹立売り、腹立買ひ、決してすべからず
これは、他人の取引を羨ましいと思ったり、妬んだりして、相場を冷静に判断することなく、取引することはするべきではないといっています。
現代ではTwitterなどで、爆益報告などを目にすると、自分も焦ることになりますが、いかに焦らずに、自分が事前に決めた投資方針を貫けるかが重要ということになると思います。
最近ではイナゴ投資ともいいますが、当時から「けなり商内」という言葉があったようです。”けなり”というのは、”下なり”が転じたもので、相場ではこれをやっては行けないと言われています。
相場師のタブー
相場師がやってはいけないこととして5つが紹介されています。
・どんなに親しい人にも帳合米の売買をすすめてはならない。
・人に相場観や、売買方針を語るな
・たまたま自分の相場観があたった時に人に言うのは愚か
・仮に相場観や売買方針が的中している場合でも、人に言えば、利益は減る
・情報収集はするが、相場観と売買方針は自分で研究する
同じ様なことを繰り返し言っているだけではありますが結局は、相場は孤独なものであり、いかに相場を研究し、いかに自分で判断することが重要家を説いているように思います。
さまざまな投資のアドバイス
これらの原則以外にも様々な相場の考え方が紹介されています。ここまでに紹介されていない部分で、重要なものをいくつかピックアップしました。
・一気に買わずに少しずつ買う
・ナンピンは損失を広げるためやってはいけない
などなど、
現代で言われていることと、ほとんど同じ様なことが江戸時代中期にかかれていたことに本当に驚かされます。特に、休むことも大事という点は、ほとんどの投資の書籍でも言われることは殆どないと思います。投資家の心理まで踏み込んだ投資の古典、是非一度読んでみることをおすすめします。
書籍版はプレミアがついて高そうですが、ありがたいことにKindle版が登場しました。
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