株式投資で損失が出た場合、確定申告で還付が受けられる場合があります。
株式口座の種類
まず株式口座における確定申告の必要性について再確認です。
株式口座には以下の種類があります。多くの方は「特定口座(源泉徴収あり)」だと思います。
- 特定口座(源泉徴収あり)
- 特定口座(源泉徴収なし)
- 一般口座
- NISA・つみたてNISA口座
口座の種類によって、確定申告は以下のようになっています。
確定申告 | |
---|---|
特定口座(源泉徴収あり) | 不要 |
特定口座(源泉徴収なし) | 必要 |
一般口座 | 必要 |
NISA・つみたてNISA | 不要 |
特定口座(源泉徴収あり)は原則確定申告不要ですが、確定申告することも出来ます。
確定申告するメリット
確定申告することで、いくつかのメリットがあります。(収入の状況などによって該当しない場合もあります。)
・損失を繰り越すことができる。
・他の証券口座と損益通算できる。
・税率を抑えられる場合がある。
損失の繰越
株で損失があった場合、確定申告で「譲渡損失の繰越控除」を行うことで、損失を翌年以降3年間繰り越すことが可能です。
この控除を利用する場合、損失があった年の確定申告が必要になります。なお、「譲渡損失の繰越控除」を利用するには、後述する課税方式において、「申告分離課税」を選択する必要があります。
他の証券口座と損益通算できる
複数の証券会社を保有しており、A証券会社で50万円の利益、B証券会社で70万円の損失がある場合、確定申告することで、損益通算され、A証券会社で支払った源泉徴収の還付を受けることが出来ます。
確定申告不要なケース
特定口座(源泉徴収あり)の場合で、配当金で利益が上がっており、売却損がある場合、配当金の受け取り方法を「株式数比例配分方式」で選択していれば、証券口座内で損益通算されますので、確定申告は不要です。払いすぎた税金は翌年1月に証券会社より還付されます。
確定申告の課税方法の選択
配当金がある方で、確定申告する場合、課税方式において、2つの課税方式を選択することが出来ます。状況に応じてどちらがお得かも変わってきます。株式の確定申告で最もむずかしい部分だと思います。
– 申告分離課税
– 総合課税
総合課税 | 申告分離課税 | |
---|---|---|
譲渡損失との損益通算 | ✕ | ◯ |
配当控除 | ◯ | ✕ |
税率 | 累進課税 | 所得税 15.315% 地方税 5% |
ちなみにこちらの課税方式は、配当金に関する部分です。譲渡損益については、分離課税が適用されますので、課税方式の選択に関わらず20.315%の税率となります。
配当金がある場合
譲渡損失の繰越がない場合で、課税所得が900万円以下の場合、総合課税を選択したほうが配当金に対する税率は低く抑えられます。※住民税の申告不要の手続きをした場合(後述)
確定申告する場合の注意点
・国民健康保険が増える可能性がある。
・扶養から外れる可能性がある。
国民健康保険料は、損益通算後、繰越控除後の所得金額によって決まりますので、確定申告をすることで、国民健康保険料を算定する所得が上がる可能性があります。この場合、確定申告とは別で、市町村で住民税の申告不要を届け出ることで、負担増を避けることが可能です。
また、扶養に入っている方は、確定申告をすることで、扶養控除の判定金額に含まれてしまいます。その金額が38万円以上となった場合、扶養から外れることになります。特定口座(源泉徴収あり)で、確定申告しなければ、どれだけ利益が出ていても、扶養から外れることはありません。
確定申告と課税方式の判定チャート
まとめ
特定口座(源泉徴収あり)の場合は、確定申告不要だが、以下に該当する方はメリットがある場合がある。
・株式の損失が大きく、翌年に損失を繰り越したい場合
・譲渡損失がない場合(繰越控除を使わない場合)で、課税所得が900万円以下の方の場合、確定申告することで配当金の税率を抑えられる。
ただし、確定申告を行うことで、
・国民健康保険が増える可能性がある。
・扶養から外れる可能性がある。
という2点には注意しましょう。